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氷河(グレーシャー)の概念は、氷河が人間の活動圏近くに存在していたヨーロッパ地方で生まれ育ったと言われています。特にアルプス地方に住む人たちは、古い雪を「フィルン」と呼んでいました。
フィルンは硬く、部分的に凍結しているにも関わらず雪としての性質を失ってはいませんでした。しかし、フィルンが融け再び凍結するとそれは雪ではなく氷となり、彼らはそれを「氷河」
と理解していました。
これは氷河として最も古い考え方の一つで、現在の氷河は「氷の河」と書かれるように動くものとして認識され、氷河の流動は重力に起因し、氷河底面での滑りにより「たえず高所から低地へ動いている雪と氷の集塊」と概念づけられています。
氷河の上流に雪が積み重なり圧縮され下流で融けるまでの水循環過程は氷河の流動そのものです。気候に応じて氷河の形が定まり、その形と大きさが変動することは氷河の流動に大きく関係しています。
このような氷河の流動様式は一般的には肉眼では識別出来ない程のゆっくりとした速さで、年間数十メートルから数キロメートルの流動であり、現在も動き続けています。
氷河はその形態により様々な分類がされています。
カナダの場合は地域によりその分類は様々ですが、一般的にドーム状の氷で周囲に向かって流れ出すものを氷帽と呼んでいます。
代表例が、ヌナブト準州のバフィン島にあるバーンズ氷帽です。
※氷帽(ひょうぼう):氷冠(ひょうかん)または冠氷(かんぴょう)ともいい、陸地を覆う5万km2未満の氷河の塊のこと。
山岳地帯で多く見られる底から谷を流下する氷河が谷氷河(バレー氷河)と呼ばれています。この氷河が流れ、氷河が融けてなくなった後には氷河が削ったU字型の谷が形成されます。
氷河の侵食により出来た山腹の凹地で急な壁谷と平坦な谷底をもつ、お椀を半分に割ったような形をしたものが圏谷氷河(カール氷河)と呼ばれており、カナディアンロッキーや北西海岸地域で数多く見ることができます。
地球上の氷河は拡大と縮小を繰り返してきました。
北半球では北米大陸と北ヨーロッパに大規模な氷床が形成された氷河期と、現在のような温暖期間が交互に訪れ、北米では4回の氷河期が発生し、その名残りが現在の氷河の原形となっています。
地球温暖化によって温室効果が増し、近い将来、我々の住んでいる地球の平均気温が3〜4度上昇すると予想されています。この予想通りになれば、地球上に残されている氷河は徐々に融け始め、この氷河の融け水が海へと注がれ、海水の水位が上昇することになります。全氷河の面積を累計すると約1,633km2、全陸土の約11%が海へと流れ出します。
試算によると海水の水位が今より約15メートルも上昇するとされています。東京、大阪やカナダのバンクーバーなど、海に近い陸地は海に沈むことになり、世界の海岸線が大幅に変わるでしょう。
数万年前の氷河を目の前に、地球の偉大さを感じる一方で、今直面している環境問題の大きさを実感させられることでしょう。
我々で対処出来うることを少しずつ行うことが、次世代へこの自然を残していく唯一の方法であり、自身を守ることにもなるでしょう。