カナダの森について

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温帯雨林について▲緯度の割りに温暖多雨気候は大木を育んだ
温帯雨林
▲ふかふかの苔の絨毯

温帯雨林(レインフォレスト)について
「雨林」で連想する言葉は何であろう。多くの人は、熱帯雨林、熱帯地方を思い浮かべるのではないだろうか。雨林と称されるのは熱帯雨林だけではない。北米カナダ北西部にも針葉樹の巨木がうっそうと茂る温帯雨林の世界が広がっているのである。
まず、温帯雨林について説明したい。温帯雨林(Temperate Rain-Forest)となる条件は、
①比較的温和な気候をもつ緯度地帯(32〜60度)
②年間降雨量が最低192cm
③山岳地帯と海に非常に近い場所
である。世界的にそのような自然条件を持ち合わせている地域は日本を始め、ニュージーランドやチリ、アルゼンチン、タスマニア、北欧、トルコ、ロシア、そして北米の西海岸などだ。

カナダのブリティッシュ・コロンビア州には地球上の温帯雨林の約25%があり、まさに地球上に残された最大級の温帯雨林が広がる。残念ながら、今日では森林伐採や自然破壊によりかつて地球上に存在していた温帯雨林の半分以上は破壊され、ここブリティッシュ・コロンビア州も例外ではなく、その温帯雨林地帯の約75%がすでに伐採により破壊されている。

そこで、カナダ政府は1995年に森林法(Forest Practices Code of British Columbia Act)を施行、森林の保護管理により少しずつ森が復活しつつある。

 北国のイメージが強いカナダにおいて、どのようにして温帯雨林はできるのか。ブリティシュ・コロンビア州は北緯45度〜60度付近とやや高緯度に位置するが、カナダの西海岸、太平洋を流れる海流の影響で夏は涼しく冬は暖かい。また一年を通して太平洋から吹いてくる西風が水蒸気をたっぷりと含んだ雲を運び、カスケード山脈やコースト山脈にぶつかることでその湿った雲は低い温度の上空へ押し上げられ、山脈手前の地域に多量の雨を降らせるという地形的条件のもと、この地の温帯雨林は形成されている。この地の温帯雨林には、ウエスタンレッドシダー(米杉)やウエスタンヘムロック(米栂)、ダグラスファー(米松)など樹齢800年を越す巨木群がうっそうと茂り、そこには数千のも植物類が生育している。森林を流れる川には、産卵のためにサーモンが遡上、それを求めグリズリーベアーやブラックベアーがやってくる。彼らが食べ残したサーモンやサーモンの死骸が他の動物や白頭ワシなど鳥類のえさになり、その糞や食べ残しが木や植物の養分となって吸収され森を形成することで、見事な食物連鎖が成り立っているのだ。また、ヨーロッパ人がカナダへ移住するより遥か昔からこの地に居を構えていた先住民族にとって、温帯雨林の木々は生活する上で必要不可欠だった。家、カヌー、狩猟道具、食器や柔らかい内皮から衣服を、さらに忘れてはならない先住民族文化の象徴ともいえるトーテムポールを作る材料として、温帯雨林は太古から生あるものにその恵みをあたえ続けている。
  日本でも研究により森の青臭い成分がストレスを軽減する効果があると発表され、森林浴などという言葉も珍しくはなくなった。ブリティッシュ・コロンビア州の温帯雨林にはネイチャートレイル(自然歩道)も良く整備されている。木々を痛めないよう木道が作られ、その植生が説明された看板も配置、誰でも気軽に楽しめるようになっているのだ。日本でのビルに囲まれた日常に疲れを感じたら、カナダの温帯雨林で森林浴を楽しみストレス解消、そして太古からの森のエネルギーを身体で感じてみてはいかがであろうか?

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お薦めスポット

クイーンシャーロット島(QUEEN CHARLOTTE ISLAND/ブリティッシュ・コロンビア州)

クィーンシャーロット島
▲ニュークルーの森を覆う苔の絨毯クィーンシャーロット島
▲ウィンディーベイの捩れながら伸びる巨木

 

クイーンシャーロット島は、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州、プリンスルパートからヘカテ海峡を挟んで対岸に位置する。
その広さは9596km2、140あまりの島々で構成された群島です。
クイーンシャーロット島は、北島のグラハム島、南島のモレスビー島と大きく二つに分けられ、経済の中心はグラハム島にあるクイーンシャーロット島最大の町、クイーンシャーロットシティーでいわゆる現代の町です。
逆にモレスビー島のほとんどはグアイハナ国立公園保護区とされ、道路は全く通っておらず、ユネスコ世界文化遺産に指定されたアンソニー島をはじめ、北西太平洋先住民族文化(ハイダ族による)やそれを支えてきた自然環境、貴重な植生がそのまま残され、時が止まってしまったような印象を受けます。
続いて、クイーンシャーロット島の歴史をご紹介します。1700年代後半毛皮貿易からヨーロッパ人との交流が開始されると伝染病が蔓延し免疫を持たないハイダ民族は14,000人から3,500人へ激減しました。集落を捨てて、比較的病人の少なかった北島へと移動したのが現在の暮らしのルーツとなっています。
集落跡には無言のうちに村民の歴史を伝える住居やトーテムポールが残されています。文字による伝承を行わなかったハイダ族が家系に関する伝承や戦い、祝い事を記録するべき出来事を象徴的に刻み込んだトーテムポールは今、朽ち果てようとしています。トーテムポールは、厳しい自然にさらされ、あるものは傾き、あるものは地面に倒れて朽ち果てています。朽ち果てて土に戻れば新しい木々はそこから栄養を貰って森が再生を始めます。
ハイダ民族が保存する目的ではなく、自然のサイクルにまかせて生きている様子や自然環境がうかがえるものとなっています。
クイーンシャーロット島への移動手段についてご紹介します。
カナダ本土バンクーバーとモレスビー島(南島)サンドスピットを2時間で結ぶ航空便を利用するのが一般的です。また、他にはプリンスルパートから水上飛行機やフェリーでグラハム島(北島)のクイーンシャーロットシティへ入る手段もあります。モレスビー島とグラハム島はフェリーで約30分程度となっています。
氷河期でも氷に閉ざされず、また先住民族によって守られてきたクイーンシャーロット島は、鬱蒼とした温帯雨林の原生林が広がっています。地面は腐葉土や苔でふかふかとなっており、ふかふかの苔を目的の散策もまた楽しい時間になるでしょう。

※シーズン 6月上旬から9月上旬


案内図

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お薦めスポット

バンクーバー島 (VANCOUVER ISLAND/ブリティッシュ・コロンビア州)


▲ マクミラン州立公園、トレイルの入り口 バンクーバー島
▲ロングビーチ

 

■マクミラン州立公園
 (MacMillan Provincial Park)
1928年にバンクーバー島で初めて指定された州立公園で、それ以来今日に至るまで木々の伐採を禁止したため、中には樹齢800年を超えその周囲が90mにも及ぶダグラスファー(米松)の巨木やウエスタンヘムロック(米栂)の林がそびえ立ち、また温帯雨林地帯ならではの苔やシダ類の植物が生い茂っている。その手付かずの原生林である温帯雨林の中整備されたトレイルで、手軽に森林浴を楽しもう。

※シーズン 5月下旬から9月中旬

<アクセス>
約16km離れたポートアルバーニの町が最寄りとなり、
レンタカー利用が一般的。ナナイモより約2時間。

■パシフィックリム国立公園
  (PACIFIC RIM NATIONAL PARK)
  ロングビーチ、ブロークングループアイランズ、ウエストコーストトレイルの三つの地域からなるバンクーバー島唯一の国立公園、そしてカナダ最初の海洋公園である。その中で一番人気はロングビーチ。その名の通り、約16kmにわたる長さを誇り、美しい海岸線の雄大な景色を眺めながらの温帯雨林ハイキングはまた格別だ。

※シーズン 5月下旬から9月中旬

<アクセス>
ナナイモからトフィーノまでは路線バスが運行されており、
片道約4時間で結んでいる。


案内図

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